Yufu Blog

ピアニスト、伴奏者、ピアノ講師をしています。 桐朋→ Manhattan School of Music(NY)卒業

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ピアニスト・ピアノ講師の Yufu のブログです♪

【読了本】須賀しのぶ『また、桜の国で』🌸🕊🇵🇱

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須賀しのぶ『また、桜の国で』を読みました

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また、桜の国で』は、私が須賀しのぶさんを認識する前から、私の「読みたい本」リストに入っていました。

というのも、「ショパンの名曲『革命のエチュード』が、日本とポーランドを繫ぐ!それは、遠き国の友との約束。」という煽り文を読んだから。
やっぱりクラシック音楽が題材になっていたりすると興味をそそられるのですよね。

気になってはいたものの読みたい優先度はそんなに高くなく、ずっと手つかずだったのですが、昨年、須賀しのぶ作品にどハマりしたことにより「あの本の人だったの!?」と、本作を読みたい意欲に駆られたわけです。


あらすじと感想

一九三八年十月──。外務書記生・棚倉慎はポーランド日本大使館に着任。ナチス・ドイツが周辺国へ侵攻の姿勢を見せ、緊張が高まる中、慎はかつて日本を経由し祖国へ帰ったポーランド孤児たちが作った極東青年会と協力、戦争回避に向け奔走する。だが、戦争は勃発、幼き日のポーランド人との思い出を胸に抱く慎は、とある決意を固め……。
(文庫本裏表紙より引用)

意気揚々と読み始めた訳でしたが、第二次世界大戦の話なので、まあ重い重い。

しかもこのタイミングで、ロシア軍がウクライナ侵攻を始め、同じような状況下を描く本作を読むのが辛く、「読みたくない……」と本を置く日々が続き、1ヶ月近く掛かっての読了となりました。

約600ページの大作で、須賀しのぶさんの歴史への造詣の深さに感嘆し、「すごいものを読んだ…!」という気持ちが残るのだけれど、感想を書くのは難しい。

詳しく書くとネタバレになりそうなのであまり書けないのだけれど、とにかく心がギュッとなるシーンがとても多かったです。
感想を書く代わりに印象に残った文章をいくつか引用させてください。

「私たちがポーランドのために戦っていると思いあがっているすぐそばで、彼らはただ、人間らしく死ぬためだけに戦ったのです。
そう、ユダヤのためでもポーランドのためでもないのです。自由を取り戻すためでもないのです。
彼らはただ、尊厳を持って自らの人生を終わらせるために、戦ったのです。
自分たちは人であると、世界に訴えるために。そしておそらくは、自分自身に信じさせるために。」(p.415)

「国を愛する心は、上から植えつけられるものでは断じてない。まして、他国や他の民族への憎悪を糧に培われるものであってはならない。
人が持つあらゆる善き感情と同じように、思いやることから始まるのだ。そして信頼と尊敬で、培われていくものなのだ。」(p.450)

「戦闘は無惨なものだ。理念がどれほど崇高であろうが、実現するための戦闘はただただ残酷だ。そして戦うことのみに意味を見いだすようになったら、それはもう破綻しているのだ。我々は常に、戦闘が終結した後のことを考えて行動しなければならない。君たちは、自由のためにみごとに散るためにいるのではない。美しい最期を望むようになったら、それはもう、理想そのものを自ら投げ捨てたのと同じことなのだ」(p.553)


戦争体験の話を聞いたり、戦争を描いたドラマや映画を観たりする経験は誰しもあると思うのだけれど、私はそれらを見聞きする度に「彼らの体験を知ることで私達は戦争を回避できる。そんな悲劇は二度と繰り返してはいけないんだ」と思っていたの。

でも実際に、こんな時代になっても戦争は起こっていて、世界中、みんなその事実を知ってるのにどうにも出来なくて。それがすごく歯がゆくて悲しい。


ポーランドを代表する作曲家・ショパンの音楽

だんだん本の感想から逸脱してしまって申し訳ないので話を戻すけれど、ポーランドはドイツから侵攻されて戦って、そんな時に聴くショパンの「革命」や「英雄」って、私たちが今日平和な生活の中で聴くものとはまったく違うだろうな、と思った。


ショパンの音楽を聴く耳がすこし変わってくると思う。


「革命」という通称は献呈された友人フランツ・リストによるものだが、1831年、ショパンはウィーンからパリへ向かう途中でロシア軍によるワルシャワ制圧を知り、悲嘆と怒りで作曲したといわれている。

本作の主人公、慎の父はロシア人。
慎は子どもの頃、『革命のエチュード』が好きで、父によく弾いてとせがんでいた。

しかし父自身はあまりこの曲が好きではなかった。
自身が祖国のために一度として戦わなかったことを悔いているからだ。

「おまえは何をしているのか、と問われているように感じてしまう。自分の中に負い目があるからだろう。戦わず、ただ膝を屈したのだと責められているようでな」(p.200)



ショパンも当時、同じような気持ちだったかもしれない。


直木賞候補、高校生直木賞受賞

ちなみに本作は第156回 直木賞候補作、そして翌年、第4回・高校生直木賞を受賞している。


「高校生直木賞」は直木賞ノミネート作品の中から高校生が投票し、選ぶ賞らしい。
エンターテイメント作品が並ぶなかで、高校生がこの歴史的な一冊を選んだというのが素晴らしいなと感じた。


ちなみに、題156回直木賞受賞作は『蜜蜂と遠雷』だそうだ。なるほどな……
時代遅れな私さえ、話題になった時に読んでたわ…(笑)


さいごに

感想を書くのが難しすぎて、逆にだらだらと書いてしまいました。
まとまりのない文章になってしまい、恐縮です。

私はニュースで目にするウクライナ情勢に心が痛くて、この本もそれと重ねつつ、胸が苦しくなりながら読んだけど、この時代、この時期に読むからこそ学ぶこと、感じることがきっと沢山あると思います。オススメです。

吉田大助さんの巻末解説も素晴らしかったので、「読みたいけど長いな〜」と思われる方は、先ずそちらを読んでみてもよいかもしれません。

ドイツ軍側から描いた同じ著者の『神の棘』もいつか読んでみたいと思っていますが、今は『また、桜の国で』で胸がいっぱいになってしまったので、心に余裕が出来た頃にまた挑戦したいと思います(*´ω`*)



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